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商標の審査を早めるには? ファストトラックと早期審査について

ひとつ前のブログでは商標出願までに要する時間について説明しました。
ざっくりまとめると「出願から登録査定まで約1年程度かかる(2021年3月時点)。」という内容です。

ただ様々な事情から「少しでも早く商標を登録させたい」」という場合も多いと思われます。
そこで今日は商標の審査を早める方法をご紹介します。

審査を早める為の方法として2つの方法があります。

1.ファストトラック審査

こちらは以下の2つの要件を満たす出願が自動的に対象になります。別途申請や手数料は不要です。

(1)出願時に、「類似商品・役務審査基準」、「商標法施行規則」又は「商品・サービス国際分類表(ニース分類)」に掲載の商品・役務(以下、「基準等表示」)のみを指定している商標登録出願

(2)審査着手時までに指定商品・指定役務の補正を行っていない商標登録出願

特許庁によると「出願から約6か月で最初の審査結果通知を行う」と説明されています。通常の審査期間の約半分ですね。

上記(2)の条件がある為、出願時にファストトラックの対象となるような指定商品・役務の記載にする必要があります。注意して願書を作成しましょう(出願後に補正したらアウトです。)。

具体的には特許庁ウェブサイトにてとてもわかりやすく説明されています。下記Q&Aを観ればご自身で出願される場合もファストトラックの対象案件として出願することが十分可能だと思います。

特許庁 ファストトラック審査に関するQ&A
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/fast/shohyo_fast_faq.html

一方、指定商品・役務を具体的に記載できない点には注意が必要です。例えば、誰も見たことのない全くの新しい商品の場合、「類似商品・役務審査基準」等に掲載された指定商品では適切に保護されないおそれがあります。このような場合は、可能な限り具体的な商品記載に基づき出願する方が良いと思われますので、事前に弁理士等の専門家と相談されることをお勧めします。

2.早期審査

次は商標早期審査です。こちらは出願とは別の申請が必要ですが、特許庁へ手数料を支払う必要はありません。(弁理士等に依頼した場合は別途手数料が発生すると思われます。)

特許庁によると、早期審査の対象案件が審査結果を得るまでの時間は出願から平均1.7か月(2019年実績)とのことです!通常の審査と比べるとめちゃ早いですね!個人的経験から言っても約2か月前後で審査結果を受領しているケースが多いです。

早期審査の利用実績は以下の通りです。

出典:    特許庁 商標早期審査・早期審理の概要 3. 早期審査の利用実績https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/soki/shkouhou.html

2019年には8,110件の早期審査の申請がありました。
国際商標登録出願を除いた2019年の出願件数は約17万件ですから全体の約5%程度の出願が早期審査を申請していることになります。なかなかの件数ですね。早期登録のニーズが多いということでしょう。

ただ早期審査の対象となるための条件はなかなか厳しいです。
具体的には以下の対象1~3のいずれかの条件を満たす必要があります。

対象1:出願人(又はライセンシー)が、出願商標を指定商品・指定役務の一部に既に使用していて(又は使用の準備を相当程度進めていて)、かつ、権利化について緊急性を要する案件

※ 「緊急性を要する」とは、次のいずれかをいいます。
a) 第三者が出願商標を無断で使用(使用準備)している
b) 出願商標の使用(使用準備)について第三者から警告を受けている
c) 出願商標について第三者から使用許諾を求められている
d) 出願商標について日本以外にも出願中である
e) 早期審査の申出に係る出願をマドプロ出願の基礎出願とする予定がある

対象2:出願人(又はライセンシー)が、出願商標を既に使用している商品・役務(又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務) “のみ” を指定している案件

対象3:出願人(又はライセンシー)が、出願商標を指定商品・指定役務の一部に既に使用していて(又は使用の準備を相当程度進めていて)、かつ、「類似商品・役務審査基準」等に掲載されている商品・役務 “のみ” を指定している案件

少し分かりづらい文章ですが、対象1~3に共通する条件として「出願商標を使用していること」または「使用の準備がかなりすすんでいて使用開始前の状態であること」のいずれかであることが求められます。これがなかなか厳しい。普通、商標出願は使用開始前に行うことが多い為です。

また、経験的に言って、早期審査の件数が増えてきた2017年頃から早期審査の判断基準がやや厳しくなっていると思われます。要するに、以前だったら早期審査の対象となった内容が、現在の基準だと認めてもらえないという状況です。ガイドラインの基準が厳格に適用されているんじゃないかと推測しています。

その厳しめの基準から、データはないものの、早期審査の申請はかなりの数が「対象外」とされているように思われます。実際に、出願経過を見てみると早期審査が認められなかった案件はけっこう多いんですよね。早期審査が認められないと貴重な時間を無駄にしますので、一刻も早く権利化したい商標については早期審査の経験が豊富な弁理士に相談することをお勧めします。

ちなみに早期審査が認められない場合、その理由を記載した「早期審査選定結果通知書」が届きます。これが届くとけっこうショックです(笑)。

なお早期審査の対象外となった後、条件を満たすことが出来れば、再度早期審査の申請をすることは可能です。

次回は早期審査の申請をする際に気を付けるべきポイントをお話しします。

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