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商標の早期審査 事情説明書作成における具体的アドバイス

前回は商標の審査スピードを早める方法①ファストトラックと②早期審査の概要を説明しました。

今回は早期審査を申請する際の注意点をマイ業務経験から解説します。

とはいっても早期審査の注意点を網羅的にカバーするものではありません。まずはガイドラインをお読み頂き補足的に読んでもらえるとちょうどいいかなと思います。

またQ&Aもかなり内容が充実してます!お勧めです。

商標早期審査・早期審理の概要
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/soki/shkouhou.html

商標早期審査に関するQ&A
https://www.jpo.go.jp/faq/yokuaru/trademark/shkouhou_q_a.html

まず早期審査を申請する際の手続ですが「早期審査の事情説明書」を提出します。この書面で出願商標が早期審査の条件を満たすことを証明しなければなりません。

前回説明済ですが、以前よりも早期審査の基準はやや厳しめになっていますので(2021年3月現在)ガイドライン上の条件から少しでも逸脱すると認められないおそれがあると思って下さい。ソースは私の業務経験です。。。(泣)

1.商標の同一性

まず一点目。願書に記載の商標(出願商標)と使用商標は、原則同一でないといけません。実際には「一般的書体で出願したもののデザイン化したロゴを使用している」といったケースが結構あります。この場合、デザイン化の程度次第ではありますが、早期審査が認められない場合もあり得るため注意が必要です。

以下、特許庁による同一とは認められない具体例です。

出典:特許庁「商標早期審査に関するQ&A」

ゴシック体と明朝体程度の差異であれば同一性を認めてもらえますが、商標が特徴的なオリジナルのフォントだったりする場合には使用商標を出願し同一性でケチがつかないようにしましょう。

なお経験から言って、いわゆる「商標的使用かどうか」は問題視されていないように思われます。厳密には商標としての使用とは言えない表示しか用意できないとしても、とりあえず申請してみることをご検討下さい。

2. 出願人の同一性

次は出願人と商標使用者の同一性です。出願人と同一人が商標使用者であることが提出書類で確認できないといけません。具体的には、提出資料に出願人の名称と住所が記載されていることが求められます。 

「住所は無くてもいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、特許庁資料「商標の使用に関する説明書類を作成するにあたって」を見ると、どの「良い例」にも出願人名とその住所が記載されています。

出典:特許庁「商標の使用に関する説明書類を作成するにあたって」

大企業・有名企業は住所記載がなくても問題視されないかもしれませんが、不要な突っ込みを受けないようにしておく方が無難です。カタログ等に住所が書かれていない場合は、住所を確認可能な別資料で出願人の同一性を証明できるようにしましょう。

3.「商標の使用の準備を相当程度進めている」ことの証明

商標の使用開始前であっても使用の準備が相当程度進んでいることを証明できれば早期審査の対象となります。

「まだ商標は使い始めてないけどこっちならいけるかも。」と考える方も多いと思われます。だがしかし!ポイントを押さえた資料を用意しないとあっさり撃沈してしまいます。

まず「商標の使用の準備を相当程度進めている」とはどういう定義なのか。

特許庁のガイドラインによると以下の通り。

出典:特許庁 「商標早期審査・早期審理ガイドライン」

上記の通り「使用とほぼ同等と認められる」場合を指すとあります。

ただその後が重要で「社内において商品パッケージのデザイン案やホームページでの使用イメージ案を作成しただけ」では認められないとあります。

「使用の準備を相当程度すすめているかどうか」の重要な判断基準のひとつは「出願商標が外部に公開されているかどうか」です。この点がクリアされていないと早期審査を認められる可能性はかなり低いでしょう。

社内でデザイン案やウェブサイト作成が完結する場合、この「出願商標を外部に公開」という基準を満たせません。一方、外部のデザイン会社等に委託している場合は「外部に公開」されていることになります。また「出願商標に関する新聞記事等の報道資料」でも本要件を満たしますが、記事になること自体が商標が「外部に公開」されたことの証明でもある訳です。

この「出願商標が外部に公開されているかどうか」という視点で早期審査の対象たりえるかを検討し、提出資料の準備をして下さい。

なお筆者の経験では、出願人の関連企業がカタログの作成等を請け負った場合も早期審査の対象として認められました。出願人と別法人であれば「外部」の基準はクリアできるように思われます。

また細かい点ですがパンフレット、カタログ等の印刷について、ガイドラインには「その受発注を示す資料」とある為、「発注のみ」または「受注のみ」では認められません。この点も十分注意してください。

以上、早期審査申請時の注意点について解説しました。

早期審査の申請は郵送でも可能ですが、電子化手続の為、オンライン提出よりも一か月程余分に時間かかるようです。審査時間を短縮するための早期審査でこの一か月のロスは痛すぎる。。。オンライン提出すれば良いものの、自前でオンライン提出する環境を整えられるのはほんと一握りの企業でしかないでしょう。

更に申請条件の複雑さを考慮すると、早期審査に慣れた弁理士等の専門家に依頼するほうが良いように思われます。

前々回のブログでも説明しましたが、当分は「審査期間が1年前後」という状況は継続すると思われ、早期審査を上手に利用することの重要性は増しています。弊所でもご相談を承りますのでお気軽にご相談下さい(出願済で早期審査からというケースでももちろんOKです。)。

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