Loading

ブログ

商標出願→登録までの時間は?理由とともに解説します

「商標出願した後、登録までどれくらいの時間がかかりますか?」とお客さんに聞かれた際には「早くても1年くらいかかりますね」と回答しています(2021年3月)。

大抵は「えー!そんなにかかるんですか?」と驚かれます。早くても1年。長いですよね。ここ数年は1年程度かかってしまう状況が定着してしまってます。

特許庁は「商標審査着手状況」というページを公開しており指定商品・役務のカテゴリごとに審査時期の目安が確認できます。

商標審査着手状況(審査未着手案件)
https://www.jpo.go.jp/system/trademark/shinsa/status/cyakusyu.html

2021年3月時点で「雑貨繊維」が「8~10か月」なので少しずつ改善されてきているのかなーという印象ですが、全体的にはまだまだ時間がかかっていると思われます。

実は5年ほど前まではもっと審査は早かったのです。
参考までにある権利者さんの商標出願~登録査定までの時間を時系列でみてみました。

2016年1月上旬出願 2016年5月下旬登録査定 約4か月 
2017年2月下旬出願 2017年7月中旬登録査定 約5か月 
2017年12月下旬出願 2018年8月下旬登録査定 約8か月 
2018年7月下旬出願 2019年7月中旬登録査定 約1年
2019年4月下旬出願 2020年3月下旬登録査定 約11か月 
2020年1月中旬出願 2020年1月上旬登録査定 約1年

ご覧の通り、2016年頃は出願~登録査定まで約4か月でした。
このころは商標セミナー等でも「出願から登録までは約4~5か月程度です」とか喋っていた記憶があります。2017年頃から雲行きが怪しくなり、2018年には1年かかる状態になり現在に至る、という感じでしょうか。

どうしてこんなに商標出願の審査に時間がかかるようになったのでしょうか?

一番の原因として商標出願件数の増加が挙げられます。

我が国の2010年からの10年間の出願件数を示したグラフがこちらです↓↓

出展:特許行政年次報告書2020年版

2013年頃までは10~11万件前後だった出願件数が2014年から増加に転じ2019年は約19万件にまで膨れ上がりました。2011年のほぼ2倍です。

対して商標出願を審査する審査官の人数はというと。。。


出典:特許庁国家一般職(事務職員、商標審査官)採用案内

商標審査官の数はわずか140人程度。

単純計算で19万件の出願を処理しようとすると、審査官一人あたり年間約1357件の出願を審査しないといけません。月ベースでは一人あたり113件。

あかん。審査官殿が死んでしまう。

これがどれほど大変な処理件数かということは商標業界の端っこの端っこにいる身としてよくわかるつもりです。商標の審査って、要するに商標調査をするようなものだと思いますが、毎月100件以上の調査を処理するというのがいかに大変なことか。

省庁の中では特許庁の業務環境はとってもホワイトだと聞いたことがあるものの、商標審査官の皆様は大丈夫なのでしょうか。。。 商標審査官の皆さん、本当にお疲れ様です!!どうかお体を大切にして頂きたいと心より思います。

以前に面談で担当審査官と雑談した際に「いまは出願件数が多くて本当に大変そうですね」とお声がけしたら「もう本当に大変で。。。(泣)」と嘆いておられました。ただ審査官の数はすぐには増やせないので、審査に時間を要するこの状況は当分続くのではないか、とも仰っていました。

ということで「なぜ商標出願の審査は時間がかかるのか」ということを数字の面から解説してみました。「時間がかかるのはわかった。じゃあやっぱり待つしかないの?」という疑問に次回お答えします。

余談ですが私がこの業界に入った2007年頃はインドでの商標出願は登録までに10年程度を要することはフツーでしたね。出願時に生まれたお子さんが小学4年生頃にやっと登録になるという衝撃。いや流石に時間かかりすぎですよね(笑)。

PAGE TOP