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商標トラブルによる屋号の変更 商標が原因で会計事務所様が屋号を変更した事例を解説します!

先日、ツイッターで「ひかる会計事務所」様が商標に関するトラブルに巻き込まれた結果、屋号を変更することになったというニュースがTLに流れてきました。既に屋号を「ひかる会計事務所」様から「三村雄一税理士事務所」様へと変更されたようです。

https://hikatax.jp/

三村雄一税理士事務所様のホームページ

三村雄一税理士事務所様のホームページ 「ひかり税理士法人から受領した通知書及び屋号変更について」

以下、簡単に経緯をまとめると、2018年から約2年程「ひかる会計事務所」という屋号を使用していたところ、2020年10月13日付で京都の「ひかり税理士法人」の代理人より「通知書」が送付されてきました。

通知書には『「ひかる会計事務所」と「ひかり税理士法人」及び「ひかり」とは商標として類似すると言わざるを得ない。よって「ひかる会計事務所」の使用は登録商標「ひかり税理士法人」及び「ひかり」の商標権を侵害するものと考えている。そのため「ひかる会計事務所」の使用を止めて頂きたい。』という趣旨が記載されていました。

ひかり税理士法人が所有する登録商標はこちらです↓↓

登録第4954427号

登録第5799000号

一方、ひかる会計事務所様は屋号等を商標登録はしていなかったんですね。

ひかる会計事務所様のブログには、愛着ある屋号の変更を唐突に要求され困惑されたこと、「ひかる会計事務所」がとても思い入れのある名前であること、一度も「ひかり税理士法人」と勘違いされたことは無いこと等が綴られており、驚きや戸惑いとともに屋号変更にあたって大変悩まれたことが伝わってきます。無理もありませんね。突然「商標権侵害だから商号を変えてくれ」と言われたら困惑されることと思います。

ここで少し説明しますと、この段階では「ひかる会計事務所」の使用がひかり税理士法人の登録商標の商標権侵害に該当するかどうかはわかりません。ひかり税理士法人は「商標権侵害だ!」と主張していますが、ひかる会計事務所様が「侵害していない」と考え、双方が譲らない場合、最終的には裁判で争って決着をつけることになります。この際、使用している商標「ひかる会計事務所」と登録商標「ひかり税理士法人」及び「ひかり」とが類似する(似ている)と判断されるかどうかが重要な要素になってきます。

つまり「似ている→商標権侵害」であり「似ていない→侵害じゃなくセーフ」ということですね。

登録商標の効力についてはこちらをご覧ください。

ひかる会計事務所様が相談した弁理士、弁護士からは「商標権侵害には該当しない可能性がある」という趣旨の助言がされたようですが、悩まれた結果、屋号を変更するという決定をされました。

私も「商標権侵害ではない」、つまり「ひかる会計事務所」と「ひかり税理士法人」とは似ていない(非類似)と判断される一定の可能性があると考えます。しかし、ブログで言及されている通り、もし裁判となれば相当な金銭的・時間的コストが発生してしまいます。よって「そのリスクは取れない」というご判断もやむなしだったのかな、と思います。

ただ結果的に屋号を変更したことから「裁判程ではないにせよ費用はかかった」とのことです。それはそうですよね。屋号を変えたら、事務所看板、名刺、カタログ等を新たに作る必要がありお金がかかります。加えて登録事項の変更等煩わしいこともあったのではないかと推察致します。

ではひかる会計事務所様としてはどうすれば良かったのでしょう。

一番望ましいのは事前に特許庁に出願して「ひかる会計事務所」または「ひかる」を商標登録しておくことでした。ただ、通知書を受領した段階では「時すでに遅し」ですよね。

この場合でも、相手方(つまりひかり税理士法人)と交渉して、通知書受領後でも商標出願を行うことが考えられたと思います。

つまり、ひかり税理士法人には『うちとしては「ひかる会計事務所」と「ひかり税理士法人」及び「ひかり」とは似ていないと考えています。そのため、特許庁の判断を確認すべく「ひかる会計事務所」を出願しました。審査結果が出るまで少し待っていて下さいね』と返事をしつつ、「ひかる会計事務所」を特許庁に商標出願するという対応です。出願と同時に早期審査をかけるのが好ましいでしょう。本件では相手方より通知書が送られてきていますので早期審査の申請要件を満たすと考えられます。

商標の早期審査についてはこちらをご覧ください。

早期審査を申請すれば出願から2~3か月程度で特許庁より何らかの通知が出ます。審査で特許庁が「同一・類似商標は無い」と考えれば(かつその他登録要件を満たせば)登録査定が出ます。もし登録査定が出たとすると特許庁は「ひかる会計事務所」の出願商標とひかり税理士法人所有の登録商標は「似ていない」と審査で判断したことになる訳で、特許庁より非類似のお墨付きを得た状態とも言えます。そうなるとひかり税理士法人としては非常にやりづらくなります。実際、特許庁が非類似と判断したにも関わらず、「互いの商標は類似する」と主張をすることは怖さがあります。よって、相手方次第ではありますが、登録査定が得られればそこで話が決着した可能性もあったと思いますし、このような戦略もとり得たと考えます。

しかし、おそらくはこの選択肢も踏まえてのご決断だったのでしょう。

このように税理士事務所様が屋号変更に至った商標に関する事例をご紹介致しました。

上記事例のように、登録せずに商標を使っていると同一・類似する商標を先に登録した権利者から「その商標の使用は商標権侵害だから使うのを止めてね」と言われるおそれがあります。これは士業の事務所名(個人名を用いた士業事務所名は除きます)にもあてはまる話だということが上記事例でおわかり頂けるでしょう。もちろん士業にとどまらず商売・ビジネスで使用している屋号・商号はほとんどが商標に該当しますので、同様のリスクが存在します。

ビジネスを営む方にとって「ある日、唐突に屋号が使えなくなるとしたら。。。」と考えることはちょっとしたホラーじゃないでしょうか?

商標が使えなくなるということは、看板・商品・カタログ・広告宣伝・ウェブサイト等に表示している商標を全て差し替えることを意味します。場合によっては商品等を廃棄せねばならず取引先にも迷惑をかけるかもしれません。更に損害賠償を請求されるリスクもあります。要するにめちゃめちゃ大変なんですよね。 

何よりも愛着をもって使い続けてきた屋号・商標が突然使えなくなるという事態は悪夢以外のなにものでもありません。

大切なブランドを守り育てていく為に、また、安心してビジネスを継続していく為には商標登録は必須です!まだ登録されていない皆様、ぜひご検討・ご相談下さい。お電話又はこちらよりいつでもご相談を承ります。

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