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商標の拒絶理由通知マニュアル⑦ わかりづらい「使用の疑義」に関する拒絶理由→実は克服可能性高いです!(前編)

特許庁から無慈悲に届く拒絶理由について解説するシリーズ。特許庁から「拒絶理由通知」というものが届いたけどもう登録できないってことなの?と絶望しているあなた。そんな方にこそ読んで頂きたいです!

よくある4つの拒絶理由の最後の一つ、「商標の使用についての疑義」を解説します。よくある4つの拒絶理由についてはこちらをお読みください。

まずはキーワードの確認。特許庁から届いた拒絶理由通知内に以下のキーワードがあれば「商標の使用についての疑義」という拒絶理由です。「使用についての疑義」とは「自分、出願した商標をほんとに使うつもりあるの?」と特許庁に疑いをもたれているということです。

キーワード:「第3条第1項柱書(使用についての疑義)」

      「出願に係る商標を使用しているか又は近い将来使用をすることについて疑義がある」

この拒絶理由、よくある4つの中でも特にわかりづらいと思うんですよね。

「商標の使用について疑いがある?ということは使用開始している商標じゃないと登録できないってことなの?そんな話聞いてなかったけど。。。」
「近い将来使用することについて疑いがあるってどういうこと?使用するつもりだから出願してるんだけどな。。。」

といった困惑が伝わってきそうです。わかりみ!

まず大原則として商標は使用を開始する前であっても「使用する意思」さえあれば登録可能です。つまり、出願時には使っていなくても「将来は使うつもり」であれば良い=登録可ということです。

一方で、多数の商品・役務を指定した商標が登録されると、広範囲の商品・役務に独占権が生じ、結果として他人の商標の使用可能な範囲が狭められてしまうおそれがあります。登録した商品・役務に商標をほんとに使うならまだしも、使用しない範囲まで独占権が発生してしまうと、他人が商標を選択する範囲まで狭くなってしまい好ましいことではありません。「この使ってない範囲も俺のものだから!誰にも使わせないから!」というジャイアンみたいな商標があったら迷惑ですよね?

そこで一定の広さの商品・役務を指定して出願した際には「出願してる範囲が広いけど本当にこの範囲で使うの?」と「使用」しているか「使用するつもり」があるかを拒絶理由を通知して確認するようにしているのです。いわば「使用についての疑義」の拒絶理由により「商標のジャイアン化」を未然に防いでいるんですね(例えがアレですが。。。)。

では具体的にどういった商標が「出願範囲が広い」と判断されるのでしょうか。

以下の場合が該当します。

1.類似群コードの数が1区分で23以上の場合

2.個人で「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定した場合 ※一部法人も含みます。

3.類似の関係にない複数の小売等役務を指定した場合

一番よくあるのはおそらく3ではないかと思います。

以下、順番に解説します。

1.類似群コードの数が1区分で23以上の場合

耳慣れない「類似群コード」という言葉が出てきました。

これは指定商品・役務に割り振られた「数字+アルファベット」よりなる記号のことで「11C01」「25A01」「35K05」といった表記で用いられます。この類似群コードは全ての指定商品・役務に割り振られており、同じ類似群コードを有する指定商品・役務は互いに類似する商品・役務として審査で取り扱われます。

この類似群コードが1区分内に23以上ある場合は上記1に該当します。

2.個人で「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定した場合

これもなんだかよくわからないですよね。。。

この長ったらしい第35類の役務「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」なんですが、商標業界的には一般に「総合小売等役務」と言われています。この役務は「百貨店、総合スーパー、総合商社等の事業所が提供する役務」と説明されており、個人が使用することは想定し難いと考えられています。要するに百貨店や総合スーパーのように「飲食料品・生活用品・衣料品等の広い商品を扱う小売業者」を想定した役務なんですね。

その為、個人で「総合小売等役務」を指定すると「あんた、ほんとに百貨店や総合スーパーみたいな商売やってるの?or やる気あんの?」と特許庁から突っ込まれる結果、本件拒絶理由の対象となります。また、法人の出願であっても、審査官の職権調査の結果、「百貨店や総合スーパーの業態じゃなくね?」と疑われた際には本件拒絶理由が通知される訳です。

要するに個人の出願で、この「総合小売等役務」を指定してしまうと本件拒絶理由が必ず通知されてしまうということです。

ただですね、次回で詳しく説明しますが、この「総合小売等役務」は個人の方にとって不要な役務である可能性が高いと思われます。その場合は削除しちゃえばいいんですよね。

3.類似の関係にない複数の小売等役務を指定した場合

おそらく「使用についての疑義」の拒絶理由の原因として一番多いのがコレではないかと。。。

第35類で指定できる「小売等役務」ですが、互いに似ていない類似群コードを持つ小売等役務を指定した場合、本拒絶理由の対象となります。

具体例で見ると例えば「被服の小売等役務」の類似群コードは「35K02」です。

加えて「運用用具の小売等役務」は「35K14」の類似群コードが付されているため、「被服の小売等役務」とは類似群が異なり互いに似ていない役務になります。

このような小売等役務を指定した場合には本拒絶理由の対象となってしまいます。

ただ小売業を営む際、商品の品揃えに幅が出るのは珍しいことではありません。よって互いに似ていない小売等役務を指定して出願するケースは少なくないと思われますが、このような出願は軒並み本拒絶理由の対象となります。なかなか厳しいですよね。。。

以上が「使用の疑義」に関する拒絶理由が通知される原因です。

この拒絶理由の為に登録を断念せざるを得なかった出願がいかに多いことか。。。
その原因のひとつとして、やはり内容が「わかりづらい」という点があることは否めません。

しかし、本件拒絶理由の克服はそこまで難しくはありません。

「使用する意思」さえあればほぼ確実に克服することが可能です。

具体的な克服方法は次回以降に説明します。

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