ネーミングに関するアレコレをお伝えするシリーズ。ネーミングの知識を深め明日の大ヒット商品を生み出す糧としましょう!
みなさんは「筑水キャニコム」という会社をご存じでしょうか。
キャニコムさんは福岡にある産業機械運搬車のメーカーです。ウェブサイトを見ると主力商品は「草刈作業車」「農業用運搬車」「林業用運搬車」「土木建設用運搬車」などなど。
ウェブサイトの製品紹介はこんな感じです。
https://www.canycom.jp/products/series/
出典:株式会社筑水キャニコムのウェブサイト 「製品カタログ」ページより抜粋。
農業用の草刈車や運搬車。農業に携わっていない限り縁遠い商品かもしれません。
だがしかし!キャニコムさんはユニークなネーミングを駆使してブランディングに大成功しているネーミング界の風雲児!ネーミング界隈にとどまらない超有名会社なんです!(風雲児とか勝手に呼んじゃってすみません!)
どれくらいユニークかというのは商品名を見てもらえれば一発でわかります。
「草刈機まさお」(登録第3253773号) ※存続期間満了
「駆動静香」(登録第3366990号)
「草なぎ・たおし」(登録第4466781号) ※存続期間満了
「伝導よしみ」(登録第5005761号) ※存続期間満了
「立ち乗りひろしです」(登録第5054578号) ※存続期間満了
「芝耕作」(登録第5218424号)
「男前刈清」(登録第5517081号)
(登録第5846803号)
ウソみたいだろ。これ全部商標なんだぜ。
いかがですか?想像よりとんがってるネーミングじゃなかったですか?どれも好きですが私は「安全湿地帯」が特にお気に入りです。
私は商標「草刈機まさお」をきっかけにキャニコムさんを知ったのですが最初はのけぞりました(笑)。
こういうユニークな名前だから作業車・運搬車に縁遠い方でもカタログを読んでいてめちゃ楽しいです。
出典:株式会社筑水キヤニコム 総合カタログ(2021年版)より抜粋。
このユニークかつ強烈なネーミングでキャニコムさんはヒット商品を続々と世に送りだしています。
キャニコムさんはどのような考えの基でこのようなネーミングを採用しているのでしょうか?以下、ウェブサイトから同社の包行均会長のインタビューを抜粋します。
「競争力を決めるのは、品質・機能・価格に加え、感性すなわちネーミングが第4の価値として大変重要な要素」と経済産業省も唱えています。
当社では、「キャニコムのD・N・B(デザイン・ネーミング・ブランド)」を製品開発の3つの重要な柱としています。中身やデザインがしっかりしている商品ほど名前は重要です。名は体をあらわす。自分達の意思を埋め込み、商品のあらゆる利点を一言で現す。「キャニコムのネーミングは、いい名前を付けて愛され育てていく、というものが感じられる。」と日刊工業新聞主催のネーミング大賞において、13年連続受賞という栄誉もいただきました。
出典:株式会社筑水キャニコムのウェブサイト 「キャニコムのネーミング物語」より抜粋。
キャニコムの素晴らしいところはまず製品の品質に重きが置かれている点です。奇抜な名前が注目されますが、まず「製品が高品質であること」が土台にあるんですね。包行均会長は他インタビューで「お客様にとって本当に良い商品であると納得がいかなければ、製品は一切作らない」と語っておられます。ユーザーの生の声をとても真摯に聞き、それをヒントに製品開発に注力する。まさにユーザー第一主義とでもいうべき姿勢。機能性を追求した上で、更にユニークで人の心を鷲掴みにするネーミングで差別化を図る。更に農機具としては珍しくデザインにも力を入れている(製品デザインを担当する部署があるそうです。)!このように戦略的に自社製品のブランド化を行っている。そりゃ売れるわ!!
「中身やデザインがしっかりしている商品ほど名前は重要」という点、百回「いいね」したいです。世の中には品質は素晴らしいのにも関わらずなかなか消費者に見つけてもらえない商品がたくさんあります。そのような商品ほどネーミングで差別化を図ることが大切なんじゃないでしょうか。キャニコムさんの戦略はブランディングを考える上でとても大切な示唆が多く含まれていると思います。
そんなキャニコムさんの商標について調べていたら、同社が出願中の商標「山もっとジョージ」(商願2019-145423)に拒絶理由がでているようです。4条1項7号。うーん。なんて洒落のわからない審査官(おいやめろ)。