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商標の拒絶理由通知マニュアル⑨ とってもわかりづらい「使用の疑義」に関する拒絶理由→実は克服可能性高いです!(後編)

特許庁から無慈悲に届く拒絶理由通知について解説するシリーズ。特許庁から「拒絶理由通知」とかいう代物がとどきうろたえているあなた。そんな方にこそ読んで頂きたいです!

前々回前回に続き「商標の使用についての疑義」を解説します。前回は指定商品・役務の削除を通じて拒絶理由を克服する方法を説明しました。今回は「B.商標の使用または使用意思を確認する書類を提出する」についてお話します。

まずは本件拒絶理由の対象となる出願についておさらい↓↓

  • 類似群コードの数が1区分で23以上の場合
  • 個人で「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定した場合 ※一部法人も含みます。
  • 類似の関係にない複数の小売等役務を指定した場合

前回お話しした「A.指定商品・役務を削除する」ですが、手続としては手続補正書を出せば良いだけなのでBよりもお手軽と言えばお手軽です。

ただAのデメリットは指定商品・役務の数が減ってしまうことです。

いやもちろん不要な指定商品・役務だから削除する訳ですよ?使う予定があったら削除しちゃダメ!絶対!!ですよ?

ただせっかく出願時に指定したかわいい指定商品・役務を削除してしまうのは、例えるなら手塩にかけて育てた動物が売られていくくらいツライことではないでしょうか(大袈裟です。BGMはドナドナで。)

一方で、BはAよりも手続的には面倒ですが指定商品・役務を削除しないで良いというメリットがあります。ですから「全指定商品を使う予定がある」「指定商品・役務を減らしたくない」という場合はBでの克服を検討して下さい。

「B.商標の使用または使用意思を確認する書類を提出する」ですが、「イ.商標の使用を確認する書類」と「ロ.商標の使用意思を確認する書類」とに分けて順番に説明します。

イ.商標の使用を確認する書類

最初に大切な点を確認すると「商標の使用を確認するための書類」の提出が求められていますが「出願商標を使用していることは自体は不要」ということです。

。。。ちょっとナニを言っているのかわからないですよね?わかります。
「え?なに?禅問答??一休さん?」ってなりますよね。最初はわたしもそうでした。

私が適当なことを言ってないことを証明する為(説明が面倒だからではありません!)、以下、商標の審査便覧の関係部分を引用します(審査便覧とは審査の運用基準をとりまとめたものです。)。

“商標の使用の事実等の確認において、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をするものであることを明らかにするために、出願人は、少なくとも、類似群ごとに(小売等役務については、当該役務に係る類似群ごと)、指定商品又は指定役務に係る業務を出願人が行っているか又は行う予定があることを明らかにする必要がある。”

特許庁 商標審査便覧 第3条第1項柱書 「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」より抜粋。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/index.html

特許庁審査便覧

この手のお役所のガイドラインは一種の制度言語なので慣れてないと読みづらいですよね。要するに↑↑で書いてある大切なポイントは「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をすることを明らかにすることであって「出願商標の使用を証明せよ」とはどこにも書いていない点です。

要するに「指定商品・役務と関係する業務を出願人が行っていることを証明すればOK!」ということで、その際に出願商標が使われている必要はないということです。

例えば「化粧品」と「シャンプー」を製造・販売する会社Xが、来年使用開始予定の商標「REBOOT」を出願して、本件拒絶委理由が通知されたとします。来年使用開始予定だった為、出願商標「REBOOT」を表示した「化粧品,シャンプー」はありません。しかし、商標「REBOOT」を使用している必要はなくて、出願人が指定商品「化粧品,シャンプー」に関する業務(この場合は製造・販売)を行っていることを示す資料を提出できればOK!ということです。

しかしですね、「商標の使用を確認するための書類」って書いてあったら普通の国語力だったら「出願商標を使用してないとダメなのか」って考えても無理はないんじゃないかと思います。やはりすごくわかりづらい(泣)

「指定商品・役務と関係する業務を出願人が行っていること」を明らかにする為には以下に例示する書類を類似群コード毎に提出することが必要です(類似群コード毎っていうのもポイントです。)。

・取扱商品が掲載されたカタログ・チラシ・ウェブサイト
・取扱商品が分かる店内写真
・取扱商品が分かる取引書類(注文伝票、納品書、請求書、領収書)
・取扱商品・業務内容が紹介されている新聞・雑誌・インターネット記事

先ほどの例で挙げた指定商品「化粧品(04C01)」と「シャンプー(04A01)」で考えると類似群は「04C01, 04A01」の二つです。それぞれの類似群について使用証明が必要ですから、例えば各々のカタログが用意出来ればOK。これらの商品が掲載されたウェブサイトの写しでも大丈夫です。使用者が出願人ということがわかるように出願人名称(会社名等)と住所が記載されていないといけません。「小売等役務」の場合は、取扱商品を小売・卸売していることが客観的に理解可能な資料を準備する必要があります。

これらの使用証明を意見書とともに提出することで拒絶理由は解消します。

でですね、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」→いわゆる「総合小売等役務」とよばれる役務なんですが、これの使用証明についてはもっと複雑な条件がありまして。。。すみません!複雑すぎるしツチノコばりにレアな案件(←言い過ぎです。)になると思うのでここでは割愛します!!詳細を知りたい方は審査便覧をご覧になるか、こちらまでご連絡下さい。

ロ.商標の使用意思を確認する書類

次に「使用意思」の確認書類です。こちらは上記イの「指定商品・役務と関係する業務」を出願人が行っていない場合、つまり「現在は指定商品・役務に関する事業を行っていないがこれから行う予定がある」時に提出する書類です。

具体的には以下の書類①及び②を提出します。

①商標の使用意思を明記した文書

②事業計画等の準備状況を示す書類

①「商標の使用意思を明記した文書」は特許庁の商標審査便覧にサンプルが掲載されています↓↓

特許庁 商標審査便覧 第3条第1項柱書 「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」より抜粋。

審査便覧では「出願人等が出願後3~4年以内(登録後3年に相当する時期まで)に商標の使用を開始する意思がある場合に、指定商品又は指定役務に係る業務を出願人等が行う予定があると判断する。」と定められている為、使用開始時期はこれに沿った記載とします。印鑑の捺印は不要です。

次に②事業計画等の準備状況を示す書類はこんな感じ↓↓

特許庁 商標審査便覧 第3条第1項柱書 「商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用について」より抜粋。

こちらは最終的に出願商標の使用を開始するまでの予定を記載します。

上記をお手本に指定商品・役務に沿った事業予定を作成します。びっしりと詳細に記載する必要はなく、上記サンプルのように概要が分かれば十分です(少なすぎると特許庁から突っ込みが入る場合もあるようです。)。

上記①及び②を意見書とともに提出することで本件拒絶理由は解消します。

以上、「B.商標の使用または使用意思を確認する書類を提出する」について説明しました。

このように本拒絶理由は特許庁が求める書類を提出することでほぼ確実に克服可能です。

本記事と商標審査便覧を読み込み、意見書も書いて提出すれば良い訳ですが、知識+経験ゼロからこれらの作業を行った場合、丸一日か下手するともっと時間がかかってしまうと思われます。費用対効果の観点から言えばお勧めは出来ません。対応に慣れた専門家に任せてしまった方が効率は良いと思います。弊所ではリーズナブルな手数料にて本件拒絶理由に対応致しますのでお気軽にこちらまでかお電話にてご相談下さい。

一番よくないのは本件拒絶理由が出たからといって簡単に登録を断念してしまうケースです。繰り返し述べた通り、本件拒絶理由は適切な対応を通じてほぼ確実に克服できます。本来は登録できたのに、対応方法がわからないばかりに登録できないのはとてももったいない。そうなる前にぜひご相談下さい。

以上、「使用の疑義」に関する拒絶理由について3回にわたってお届けしました。ご質問等ありましたらお気軽にお問合せ下さい。

全然関係ないのですが本ページのアイキャッチ画像を探すべく、いつも使ってるフリー素材のウェブサイトで「ツチノコ」で検索したんですが何もヒットしませんでした。当たり前か。

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