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商標の拒絶理由対応マニュアル④ 「他人の商標と同じか似ている」という拒絶理由の対応は?

特許庁から無慈悲に届く拒絶理由通知について解説するシリーズ。特許庁から拒絶理由通知が届きもう商標登録をあきらめてしまった。。。そんな方にこそ読んで頂きたいです!

前回では通知されることの多い4つの拒絶理由を紹介しました。
今回はその中の「他人の商標と同じか似ている」という拒絶理由の対応をふかーく掘り下げて説明したいと思います。

まずキーワードの確認。拒絶理由通知書の中に以下の言葉があれば「他人の商標と同じか似ている」ことによる拒絶です。

キーワード:「第4条第1項第11号(先願に係る他人の登録商標)」

「下記の登録商標と同一又は類似」

「先に出願・登録された他人の商標と同じか似ている商標は登録が認められません。」

特許庁の審査は「早い者勝ち」。使い始めたのはこっちの方が早いぞー!と主張しても認められることは稀な仁義なき世界です(早く出願することがめっちゃ大切。)。

ですから全く同じか似ている(類似)の商標が先に登録されていれば後から出願した商標は登録が認められないルールです。このルールに沿って本件拒絶理由は通知されます。

ではこの拒絶理由を克服するにはどうすればいいのでしょう?

以下、克服するための方法をご紹介します。

①「似ていない!」と反論

そもそもこの拒絶理由は審査官が「商標が似ている(又は同一)」と考えているために通知されています。ただし最終決定ではないことから「両商標は似ていないィィィィッ!!」とシュトロハイムばりに主張すれば登録できる可能性があります(いや、そんなに力む必要はないんだけども。)。

ただ審査官を納得させるためには併存登録例・過去の特許庁決定例等を踏まえ説得力のある主張を展開する必要がありますが、一定の知識・経験が必要な作業で容易とは言えません。
商標対応の専門家であれば、反論により克服可能性がどの程度かを判断することも可能です。まずは専門家に意見を求めることをお勧めします。

実際には「これは反論すれば登録できそうだけどなー」という案件は結構あります。あきらめる前に専門家に検討を依頼しましょう。

②他人の商標と重なっている指定商品・役務を削除

これは出願商標と先行して存在する他人の商標(以下、「先行商標」といいます。)とが重なりあっている指定商品・役務を削除してしまう手法です。

商標の指定商品・役務をやや広めに設定して出願・登録することは一般によく行われています。結果、出願商標と先行商標と重なっているのが使用したい商品・役務でないのであれば、その部分を削除することで拒絶理由は解消するのです。

具体例をあげましょう。

出願商標AAA 指定商品「洋服」「かばん」「靴」
先行商標AAA 指定商品「洋服」

↑では商標「AAA」は同一で指定商品は「洋服」のみが重なっています。

ただ出願商標が一番使いたい商品は「靴」で「洋服」「かばん」は絶対に使いたい商品ではなかったのです。そこで出願商標の指定商品から「洋服」を削除しました。

するとこうなります↓↓

出願商標AAA 指定商品「かばん」「靴」
先行商標AAA 指定商品「洋服」

商標が同じでも指定商品がぶつかっていないので拒絶理由は解消することになります。

このように先行商標と重なった商品が削除可能(登録をあきらめられる)であればアッサリと克服できる拒絶理由です。

まずは先行商標とぶつかっている商品・役務が何であるのか確認しましょう!

③不使用の先行商標を取消す

登録商標は「3年間以上使っていない」と他の人からの申請により取り消されてしまいます。
この申請を不使用取消審判と言います。

その為、上記①、②では拒絶理由の解消が難しくかつ先行商標が登録されてから3年間以上使用されていない場合には取りうる選択肢です。

先行商標が使用されていないかどうか、まずはインターネット検索して確認してみましょう。より確実性を高めるために商標使用調査を実施する場合もあります。

なお参考までに商標の取消審判は毎年約1,000件前後が請求され、取消が成功する割合は80%前後で推移しています。

出典:特許庁 審判の動向 令和2年度 特許庁審判部

④先行商標を譲り受ける

商標権は他人に譲り渡すことが出来ます。
よって交渉して先行商標を譲り受けることが出来れば拒絶理由は解消します。

交渉が成功するかどうかは先行商標の権利者次第で、その商標の使用の有無、買い取りに際してはどの程度の対価を提示可能か等も関係してくるでしょう。

また先行商標の権利者が同意してくれれば、一度出願商標を先行商標の権利者に譲渡して、登録後に出願人に再譲渡する(アサインバック)という方法もあります。

⑤先行商標が(多分)登録されない

何らかの理由で先行商標が登録されなさそうな場合も拒絶理由解消のチャンスです。
例えば「先行商標に拒絶査定が出ている」「拒絶理由通知が出ていて克服は難しそう」といったケースが該当します。

このような場合は期限延長をしつつ「先行商標の審査結果が出るまで待って下さい!」と審査官にお願いしてみましょう。通常は審査を待ってもらえると思います。

また「他人に商標を買い取らせること等を目的に度し難い大量出願を行っている出願人」が世の中には存在します。この出願人の商標は出願料の未払いで出願却下になる可能性が高いことから同様に審査官に審査を保留にするようお願いすべきです。

その大量出願を行う出願人の詳細はこちらをどうぞ↓↓

以上、「他人の商標と同じか似ている」という拒絶理由の対応方法を紹介しました。

似ている商標があると指摘されても様々な解消方法があることをおわかり頂けたでしょうか。まずは簡単にあきらめず「克服可能性がどの程度あるのか」「どのような対応を取り得るのか」といった点について検討することが大事です。まずは弁理士等の専門家に対応を相談してみましょう。

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一件一件丁寧に対応しますよ。

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